家族・友人と工夫する
関節リウマチ生活

第7回 旅行編

監修:慶應義塾大学医学部 リウマチ・膠原病内科 
講師 金子 祐子 先生

旅行計画時には、医師のアドバイスを

楽しいことに積極的な姿勢はたいへんよいのですが、患者さんの症状を無視した無謀な計画は危険です。症状が悪化している時期の旅行は避ける、体力を考慮するなどの配慮は当然欠かせません。患者さんの状態をよく知っている医師に旅行計画を伝えて、アドバイスをもらうようにしましょう。

長期・海外旅行は必ず医師に伝えましょう

一週間以上の旅行や海外旅行は、健康な人でも体に大きな負担がかかるものです。旅行の際は必ず医師に相談しましょう。旅先で体調が悪化した場合の対処の仕方などを事前に聞いておくと安心です。

薬の処方や診断書の準備も

旅先での症状悪化を防ぐために一時的に鎮痛薬を追加してもらうなど、医師に相談することで必要な対策をとることができます。
海外旅行の場合は、渡航先や薬の種類、量によって持ち込みに制限がかかる場合があります。事前に主治医や薬剤師に頼んで、英文の薬剤携行証明書を準備しておくと、海外での不要なトラブルを防ぐことができます。
旅先で体調が悪くなったら我慢せず、すぐに医療機関を受診しましょう。緊急時には海外旅行保険会社に連絡して病院を紹介してもらうことも可能ですが、事前に旅行先にある医療機関の確認や、英文の診断書を用意しておけば安心です。少なくとも、病状や薬剤名を英文で書いたものを用意しておきましょう。証明書や診断書の発行に時間がかかる場合もありますので、十分に余裕をもって準備しましょう。

関節に負担をかけない服装が旅のコツ

自然散策や街歩きはもちろん、駅での乗り換えやホテル内での移動など、旅行中は普段より大幅に運動量が多くなります。関節に負担がかかりやすくなりますので、動きやすい服装や履き慣れた歩きやすい靴など、持ち物を工夫することで負担を減らし、症状の悪化を防ぎながら旅を楽しみましょう。

旅先では、思った以上に歩いている

美しい自然の中や、賑やかな異国の街など、日常から解放された旅の空の下では誰もが気分を高揚させられます。普段なら歩けないような距離でも、ついつい疲れを忘れて歩いてしまうことも多いのではないでしょうか。いつもより必ず運動量が増える想定で、服装や持ち物の工夫をしていきましょう。

動きやすい服装と両手の空くバッグで

旅行の際には関節に負担をかけない服装を準備しましょう。かぶるものより前開きの上着で、ボタンが少ない、またはファスナーなどで簡単に開閉できるものなら、脱ぎ着がラクにできます。また、素材が軽く肩回りや膝などにゆとりがあるものなら、関節への負担も少なく動くことができ、疲れの軽減にもつながります。
関節で痛めやすいのは、より小さな関節です。指を使う手提げタイプのバッグは避け、リュックやショルダータイプの斜め掛けなど、なるべく体全体で荷物の重みを分散させられるバッグを準備しましょう。

ラクに脱ぎ着できるポイントはこちらから

靴は自分に合った履き慣れたものを

関節リウマチでは、炎症が進むと関節が変形することが多く、特に全体重のかかる足は変形しやすくなっています。市販の靴が合わない場合は、患者さんの足の変形に合わせた靴を作るのも一案です。靴店や病院の靴外来で作ることができますので、一度相談してみてください。技術者や専門医が、患者さんの足の状態に合わせた靴や中敷を作製してくれます。
旅行の際は、買ったばかりの靴ではなく、履き慣れた状態の靴で出かけましょう。

靴選びのポイント

靴選びには、4つのポイントがあると言われています。

長さ:足指を伸ばした状態で履いたとき、靴と踵(かかと)の間に小指が入る余裕のあるもの

幅:靴の中で足指を開いたり閉じたりできるもの

高さ:踵をあげたとき、足の甲に痛みがなく、脱げないもの

土踏まず:自分の土踏まずの位置に靴底がしっかりフィットするもの

無理のない計画で、心と体に余裕のある旅を

余裕をもった計画をたてることで、旅行中と旅行後の症状を安定させることができます。旅のプランを考えるのも旅の醍醐味のひとつです。ご家族やご友人と一緒に楽しみながら、心と体に負担のかからない旅行を計画してみましょう。

予定を詰め込まず、疲れる前に休みましょう

せっかくの旅行だからあれもこれもと、予定を詰め込みすぎるのは止めましょう。予定をこなすために急がなければならなくなったら、怪我の元にもなりかねません。電車やバスの乗り継ぎなども、十分な余裕をみて計画をたてましょう。 旅行中は気分が高揚して、つい無理をしがちです。疲れたときはもちろん、なるべく疲れる前に休憩をとるようにしましょう。周りの方から声をかけてあげると、患者さんが遠慮せずに済みます。

負担の少ない環境を選ぶ

計画の段階で、できるだけ体への負担の少ない環境やルートを探しておくと、旅の間も症状を安定させられます。宿選びでは、和室よりも椅子やベッドのある洋室の方が、膝や足首などの関節への負担が少なくて済みます。また、徒歩での移動は階段や坂道を避け、駅を使用する場合はエレベーターの場所を確認しておくことも、体の負担軽減につながります。

準備ができたら、後は思いっきり楽しんで!

リウマチは痛みもあり、長く付き合う病気なので、ふさぎこんでしまう患者さんも多くいらっしゃいます。日常から解放される旅行は、最高の気分転換になります。患者さんはもちろん、同行するご家族やご友人の方々も、旅ならではのゆったりとしたよい時間をお過ごしください。それでは、万全の準備をして思いっきり楽しんできてください。

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